3−2.ワイヤの材質の影響
Fig.10にソリッドワイヤとフラックス入ワイヤの比較を示す。フラックス入ワイヤの場合は内部のフラックスによる自己シールド効果があり、ソリッドワイヤの場合より水中での安定適用範囲が広くなることが期待される。比較した実験範囲では、水カーテンによるシールド効果が十分であったために、アークの安定性についてほとんど差異は認められなかった。溶け込み深さはソリッドワイヤを用いた方が深いが、ビード断面形状と外観はフラックス人ワイヤの方が優れていた。しかし、フラックス入ワイヤの場合にはスラグが多量に付着し、多層盛では、このスラグの除去作業が必要になる。
Fig. 10 Macro section of weld bead (solid & FC wire)
Fig. 11 Effect of misalignment and gap on underwater weld beads
3−3.開先精度の影響
Fig.11に目違いやギャップが溶接結果に与える影響の例を示す。目違いが無い状態ではギャップが5から10mmの範囲で、水道水中、海水中とも大気中と同等の継ぎ手が得られている。ギャップが10mmより大きくなると、標準条件に設定した溶接条件では溶着金属量の不足などから満足な継ぎ手を得ることは困難であった。溶接結果に及ぼす目違いの影響は大きく、ギャップが10mmの条件では、目違いが2mm以上あると、ルート部での溶け残りやブローホールが発生するなどの危険性があった。また、ワイヤの狙い位置がずれると端部で融合不良による未溶着が発生する場合があった。また、ウィービング幅が過大になると、アンダーカットが生じ易くなるなど、開先倣い技術が重要なことがわかった。湿式の水中溶接では母材が周囲の水で強制的に冷却されるために、一般的には溶接金属とHAZの硬度が高くなる。本実験では、ボンド部のビッカース硬度は300-310程度と高くなっているが、溶接金属部では270程度にとどまり、良好に空洞が形成されていることが確認できた。また、メガフロートヘの湿式水中溶接は初層のみであり、2層目以降は大気中での溶接を実施するために、初層の溶接部は焼きなまされて、最終的な硬度は200程度まで低下する。またFig.12に示すように、表、裏曲げ及び引張試験の結果は良好であった。
Table 2 Result of tensile and bend test
Fig. 12 Appearance of tensile and bend test specimen
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